特集
2020.05.20 四條由貴

お風呂パワーが存分に得られる、正しい入浴法|博士(医学)、温泉療法専門医 早坂信哉先生

お風呂パワーが存分に得られる、正しい入浴法|博士(医学)、温泉療法専門医 早坂信哉先生

 

地域医療から始まったお風呂研究


これまでとは違う暮らしを強いられる日々に、ストレスを抱えていませんか?そんな時、ストレス緩和の一つとして、「入浴」を楽しむ人も多いのではないでしょうか。お気に入りの入浴剤を使ってリラックスしたり、汗や汚れを洗い流してリフレッシュしたり…。しかし、自己流の入浴法は、実は逆効果になってしまうこともあるのです。正しいお風呂の入り方を理解して、心身のリフレッシュ、健康増進に役立ててみましょう。
温泉 お風呂の医学研究者であり、多くのメディアでも活躍する博士(医学)、温泉療法専門医の早坂信哉先生に、入浴の基礎知識を教えてもらいました。

早坂先生は、入浴の研究を始める前、宮城県北部や沿岸部、県境など、高齢者の多いエリアで内科医として地域医療に従事していました。そこで時折、早坂先生を悩ませる事が起こるのです。介護を必要とする人に、看護師が同行し、入浴を介助する福祉サービスがあります。入浴前には、体温や血圧を測る体調チェックを行います。週に1~2回のサービスとあって、楽しみに待っているため血圧が上がってしまう人もいるのだとか。入浴を中止にすべきかの判断がつかない場合、看護師から相談の電話が入るのです。早坂先生は、どの程度の状態までなら入浴しても差し支えないのか、科学的な根拠を求め多くの医学書を調べたそうです。しかし、身近で簡単なことのはずなのに、その答えはどこにも載っていなかったのです。20年以上前のこと。お風呂の事故に関して、解明されていない時代でした。この事をきっかけに、自ら研究を進めていきました。

全国の2千人以上の高齢者を対象に調査を進めた結果、血圧では、収縮期血圧(上)160以上、拡張期血圧(下)100以上の場合に、呼吸困難や意識障害などトラブルを起こす危険性が、正常値の3倍以上になるという結果になりました。体温は、37.5℃以上の場合に、リスクが高まります。このような場合は、入浴を控えるか、シャワーですませるなど、体に負担をかけないことが大切だということです。


毎日の入浴で得られる、凄い健康効果!!


健康効果が得られる、危険のない基本的な入浴のコツは、「お湯は熱過ぎず、長く入り過ぎないこと」。40℃の湯に、10分間、肩まで浸かる全身浴を毎日行うことが、もっとも健康増進効果を得られるそうです。湯船に浸かることは、シャワーよりも、全身にくまなくお湯が触れていることから、体温が上がりやすいのです。体温が上がると、血管が広がるため、たくさんの血液が流れていきます。血液の循環が良くなるということです。血流が良くなると、栄養分や酸素が全身の細胞に行きわたり、細胞からでる老廃物、二酸化炭素などもスムーズに回収できます。

温めると、痛みも緩和されます。痛みを感じる神経は、慢性化すると過敏になり、少しの刺激でも痛みとして感じるようになります。温めることにより、過敏性を抑えることができ、痛みを軽減することができます。関節周辺の痛みに関していうと、筋や、腱といわれる靭帯がタンパク質、コラーゲンでできていますが、これらは温めると柔軟性が増し、伸びやすくなります。関節が柔らかくなることで、膝や肩を動かしやすくなり、こわばりや痛みが緩和していくのです。

温めることは、リラックス効果も得られます。最適な温度が40℃なのは、緊張を緩和させる副交感神経が刺激されるから。逆に、42℃以上の熱いお湯に入ってしまうと、交感神経が優位になり、緊張状態になってしまいます。血圧も上がるため、ヒートショックの危険性も高まります。年齢を増すにつれ、温度を感じる皮膚センサーが鈍くなることから、皮膚感覚に頼らず、温度計や給湯器の温度設定を活用すると良いでしょう。

夏季は、室温が高いので、体温が上がりやすくなります。あまり長く入ると熱中症の危険性が高まります。汗が滲んできたら一度湯船から出る、入浴前には、コップ1~2杯の水分補を補給するなど対策が大切です。1回の入浴で、800ccほど脱水になるという研究結果が出ています。脱水になると血液の粘り気が増して、ドロドロ状態に。脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まりますので、十分な水分をとり、血液をサラサラにしてお風呂に入りましょう。

毎日湯船に浸かる人は、週に2回以下の人に比べると、3年後に介護状態になる確率が低い事が明らかになりました。夏冬関係なく、毎日お風呂に入る人は、3割程度介護に陥るリスクを減らすことができるようです。痛みの軽減、睡眠の質の向上、リラックス効果などが複合的な要素により、健康維持につながると考えられます。


もっとお風呂のことが知りたいと思ったら「入浴検定」


早坂先生は、2017年にお風呂に特化した専門団体「日本入浴協会」を設立し、理事を務めています。入浴法を正しく理解し、その知識を活用してもらうために「入浴検定」を全国で実施しています。
旅館、ホテルなどの入浴施設に関わる職業、福祉医療関係など、多くの人が検定を通じて学んだ知識を役立てているようです。

また、早坂先生は、入浴に関する多くの本を執筆しています。疲れきった心と体を整える方法を紹介する「最高の入浴法」(大和書房)や、肩こり、胃痛、睡眠、ダイエットなど、目的に合わせた入浴法を紹介している「たった1℃が体を変える ほんとうに健康になる入浴法」(KADOKAWA)など。毎日の健康に役立つ知識が得られそうです。

 

早坂信哉(はやさかしんや)先生

東京都市大学人間科学部教授、温泉療法専門医、博士(医学)。以前は浜松医大准教授としても勤務。入浴や温泉に関する医学的研究の第一人者。「世界一受けたい授業」「ホンマでっか!?TV」「あさイチ」「チコちゃんに叱られる!」などのテレビ出演やラジオ、新聞や講演など多方面で活躍中。著書「たった1℃が体を変える ほんとうに健康になる入浴法」(KADOKAWA)、「入浴検定公式テキスト」(日本入浴協会)、「最高の入浴法」(大和書房)など。

日本入浴協会
https://nyuyoku-kyoukai.com/

 

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