特集
2019.09.18
おやじのエネルギーがダンスで炸裂!ボンオヤージ
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女性の活躍が注目されるようになり、若者の未来はいつの時代も明るいもの。そんな今の日本で、人知れずストレスを抱えているのは「おやじ」たちかもしれません。
「上と下との板挟み」「最近、自分の健康が気になる」「こんなに頑張ってきたのに」。
そんな閉塞感からおやじを救うヒントを示してくれるダンスユニットがあります。
静岡県静岡市で活動する「ボンオヤージ」は、ステージに生きがいを見出したおやじたちのクールな集団。市内外のイベントに呼ばれては、心をこめて本気のダンスを披露しています。
ボンオヤージが踊り続ける理由とは何でしょうか?代表のダディさんに話を聞きました。
2019年8月31日(土)、清水社会福祉会館はーとぴあ(静岡県清水区)にて、心と体に障がいを持つ方々を招いて開催されたボンオヤージのステージにお邪魔しました。
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▲仕事中のダディさん
ーー身長が高く、海外でのキャリアもあるというダディさん。お会いした第一印象は「エネルギーの塊」でした。こちらが聞くが早いか、ボンオヤージについて教えてくれました。
「ボンオヤージとは、その名のとおりおやじの集団なんですが、何をしているかと言えばダンスパフォーマンスなんですね。ほぼ固定となったメンバーが4名いるほか、臨機応変に参加してくれるメンバーが数名といった構成です。34歳から60歳まで、幅広い『おやじ』が所属しています」
ーーボンオヤージの全メンバーは、ダンス未経験だそうです。ダディさんは続けて、ボンオヤージを結成するまでのエピソードを教えてくれました。
「ダンスに出会ったのは、今から10年前。異動で大阪から静岡に戻ってきたタイミングでした。その頃、実は、今より10Kg以上太っていたんです。
原因は、無趣味でした。大阪では単身赴任をしていたので、友人づくりのためにも趣味はつくろうと思っていました。
ゴルフを始めてみたんですが、あまり上手になれなくて……早々に止めてしまってからは、ほかに休日にすることも見つけられませんでした。
気付けば100Kgにまで太ってしまったんですよ。当時は家族を大いに心配させました」
ーー単身赴任のストレスも相まっていたのでしょうか。趣味を見つけることは、健康のためにも大事ですね。
「そんなある日『GO!ALL(ゴー・オール)』というダンスミュージカルのチラシが目に入りました。これは、Jリーグのサッカークラブ『清水エスパルス』の史実にもとづく舞台で、出演者は静岡に縁のある人から募るとのことでした。すかさずオーディションに応募したところ熱意で通過、役者としてステージに立つことになったんです。
ダンスの経験もなかった自分が、ステージで精いっぱい踊る、歌う。それを見た観客のみなさんが喜んでくれるのを実感して、ダンスの魅力に目覚めていきましたね」
ーー心から楽しめる趣味を見つけたダディさんに、次なる話が舞い込みます。
「2016年に『おやじカフェ』というイベントに出ないかと声がかかりました。おやじがカフェ店員となって、踊りながらサービスするという企画だといいます。ボンオヤージを結成したのは、そのときです。
集まったメンバーに理由を聞けば、口を揃えてストレスを発散する場を求めていたと言います。現代のおやじは、じつにたくさんのストレスを抱えているなと思いましたよ。
そのおやじカフェがきっかけで、ボンオヤージはいろいろなステージに呼ばれるようになっていきました。ストリートパフォーマンスや商店街イベントなど。体重は減る一方で、やりがいは増していくのを感じました」
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ーーおやじカフェについては「それはそれはウケましたよ。熟女のみなさまにはとくに(笑)」とのことでした。
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ーー今や、さまざまなイベントに引っ張りだこなんですね。お客さまにとってボンオヤージの魅力とは何だと思いますか?
「一生懸命にお客さんを楽しませようとしているメンバーの姿だと思います。僕たちのダンスは、上手かと言われるとちょっと自信がありません。それでも、みんなで稽古をして、精いっぱい踊るんです。そんなところが好評を呼んで、活動が継続しているのではないかと思います」
ーーなるほど、一生懸命な大人はかっこいいですよね。メンバーのみなさんは、どんなところにやりがいを感じていますか?
「第1は、健康管理にもってこいだということですね。おやじにできるスポーツといえば、軽いランニングに軽いスポーツ。つまり有酸素運動なんです。上達しなかったゴルフに代わって、今の僕ができることもダンスだけなんですよ。ストレス発散の場にもなっています。
僕もダンスをしているお陰で、悪いのは眼くらいなものです。健康で長生きできれば、退職してからもきっと楽しい人生が送れると思います。
家族の理解を得られるようになったことにも、やりがいを感じます。『お父さん』が、何かに打ち込んでいるということは、家族にとってもプラスなんですよね。
『お父さん』が『うざい・きもい』存在ではなく、ちょっと尊敬できる存在になる。これがとても嬉しいことなんです。
2人の娘にとって理想の男性じゃないかな、僕って。家でも『ダディ』って、呼ばれていますよ」
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ーーこれからのボンオヤージのあり方について教えてください。
「これからの日本は、高齢者が増えていく一方です。僕たちの生活の中では見かけないだけで、心や体に何らかの障がいを持つ人の数も増えています。福祉施設の中でみなさんが体を動かせる機会と言えば、おゆうぎ会や散歩くらいです。
そんな中、僕もメンバーも、ボンオヤージの活動には社会貢献の側面があるのではないかと思うようになりました。最近では、利用者さんに楽しみと運動する機会をつくる目的で、福祉施設に呼んでもらうこともあるんです。
僕たちが踊ってみると、笑顔になって踊り出す人はたくさんいるんです。ハンディキャップを持つ人やご高齢の人も、本当はみんな思いきり体を動かしたいんだと思います。ボンオヤージが出向くことで、どんな人でもダンスができる社会こそが当たり前になっていってほしいですね。ダンスを通じて、ボーダーのない社会にしていきたい。そう、強く思います」
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▲開始の1時間前から会場に入り、リハーサルをしていたボンオヤージのみなさん。笑顔の絶えないステージとなりました。
●プロフィール●
ダディさん|ボンオヤージ代表、静岡市のとある企業に勤める50代のサラリーマン。個人としても公募のダンスパフォーマンス作品に出演するほか、障がいの有無などを超えて集結した人々が「多様性と調和」のメッセージを街中でのパフォーマンスで表現する活動団体「スロームーブメント静岡実行委員会」のサポートメンバーとしての活動も行っている。
ボンオヤージの活動は、Facebookページよりご覧いただけます。
「上と下との板挟み」「最近、自分の健康が気になる」「こんなに頑張ってきたのに」。
そんな閉塞感からおやじを救うヒントを示してくれるダンスユニットがあります。
静岡県静岡市で活動する「ボンオヤージ」は、ステージに生きがいを見出したおやじたちのクールな集団。市内外のイベントに呼ばれては、心をこめて本気のダンスを披露しています。
ボンオヤージが踊り続ける理由とは何でしょうか?代表のダディさんに話を聞きました。
2019年8月31日(土)、清水社会福祉会館はーとぴあ(静岡県清水区)にて、心と体に障がいを持つ方々を招いて開催されたボンオヤージのステージにお邪魔しました。
無趣味は不健康の入り口、ボンオヤージの設立秘話
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▲仕事中のダディさん
ーー身長が高く、海外でのキャリアもあるというダディさん。お会いした第一印象は「エネルギーの塊」でした。こちらが聞くが早いか、ボンオヤージについて教えてくれました。
「ボンオヤージとは、その名のとおりおやじの集団なんですが、何をしているかと言えばダンスパフォーマンスなんですね。ほぼ固定となったメンバーが4名いるほか、臨機応変に参加してくれるメンバーが数名といった構成です。34歳から60歳まで、幅広い『おやじ』が所属しています」
ーーボンオヤージの全メンバーは、ダンス未経験だそうです。ダディさんは続けて、ボンオヤージを結成するまでのエピソードを教えてくれました。
「ダンスに出会ったのは、今から10年前。異動で大阪から静岡に戻ってきたタイミングでした。その頃、実は、今より10Kg以上太っていたんです。
原因は、無趣味でした。大阪では単身赴任をしていたので、友人づくりのためにも趣味はつくろうと思っていました。
ゴルフを始めてみたんですが、あまり上手になれなくて……早々に止めてしまってからは、ほかに休日にすることも見つけられませんでした。
気付けば100Kgにまで太ってしまったんですよ。当時は家族を大いに心配させました」
ーー単身赴任のストレスも相まっていたのでしょうか。趣味を見つけることは、健康のためにも大事ですね。
「そんなある日『GO!ALL(ゴー・オール)』というダンスミュージカルのチラシが目に入りました。これは、Jリーグのサッカークラブ『清水エスパルス』の史実にもとづく舞台で、出演者は静岡に縁のある人から募るとのことでした。すかさずオーディションに応募したところ熱意で通過、役者としてステージに立つことになったんです。
ダンスの経験もなかった自分が、ステージで精いっぱい踊る、歌う。それを見た観客のみなさんが喜んでくれるのを実感して、ダンスの魅力に目覚めていきましたね」
ーー心から楽しめる趣味を見つけたダディさんに、次なる話が舞い込みます。
「2016年に『おやじカフェ』というイベントに出ないかと声がかかりました。おやじがカフェ店員となって、踊りながらサービスするという企画だといいます。ボンオヤージを結成したのは、そのときです。
集まったメンバーに理由を聞けば、口を揃えてストレスを発散する場を求めていたと言います。現代のおやじは、じつにたくさんのストレスを抱えているなと思いましたよ。
そのおやじカフェがきっかけで、ボンオヤージはいろいろなステージに呼ばれるようになっていきました。ストリートパフォーマンスや商店街イベントなど。体重は減る一方で、やりがいは増していくのを感じました」
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ーーおやじカフェについては「それはそれはウケましたよ。熟女のみなさまにはとくに(笑)」とのことでした。
「きもい」父親のイメージも「結婚したい男性の理想像」に変わる
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ーー今や、さまざまなイベントに引っ張りだこなんですね。お客さまにとってボンオヤージの魅力とは何だと思いますか?
「一生懸命にお客さんを楽しませようとしているメンバーの姿だと思います。僕たちのダンスは、上手かと言われるとちょっと自信がありません。それでも、みんなで稽古をして、精いっぱい踊るんです。そんなところが好評を呼んで、活動が継続しているのではないかと思います」
ーーなるほど、一生懸命な大人はかっこいいですよね。メンバーのみなさんは、どんなところにやりがいを感じていますか?
「第1は、健康管理にもってこいだということですね。おやじにできるスポーツといえば、軽いランニングに軽いスポーツ。つまり有酸素運動なんです。上達しなかったゴルフに代わって、今の僕ができることもダンスだけなんですよ。ストレス発散の場にもなっています。
僕もダンスをしているお陰で、悪いのは眼くらいなものです。健康で長生きできれば、退職してからもきっと楽しい人生が送れると思います。
家族の理解を得られるようになったことにも、やりがいを感じます。『お父さん』が、何かに打ち込んでいるということは、家族にとってもプラスなんですよね。
『お父さん』が『うざい・きもい』存在ではなく、ちょっと尊敬できる存在になる。これがとても嬉しいことなんです。
2人の娘にとって理想の男性じゃないかな、僕って。家でも『ダディ』って、呼ばれていますよ」
普通のおやじが人々を笑顔に、趣味の域をこえて地域貢献も
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ーーこれからのボンオヤージのあり方について教えてください。
「これからの日本は、高齢者が増えていく一方です。僕たちの生活の中では見かけないだけで、心や体に何らかの障がいを持つ人の数も増えています。福祉施設の中でみなさんが体を動かせる機会と言えば、おゆうぎ会や散歩くらいです。
そんな中、僕もメンバーも、ボンオヤージの活動には社会貢献の側面があるのではないかと思うようになりました。最近では、利用者さんに楽しみと運動する機会をつくる目的で、福祉施設に呼んでもらうこともあるんです。
僕たちが踊ってみると、笑顔になって踊り出す人はたくさんいるんです。ハンディキャップを持つ人やご高齢の人も、本当はみんな思いきり体を動かしたいんだと思います。ボンオヤージが出向くことで、どんな人でもダンスができる社会こそが当たり前になっていってほしいですね。ダンスを通じて、ボーダーのない社会にしていきたい。そう、強く思います」
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▲開始の1時間前から会場に入り、リハーサルをしていたボンオヤージのみなさん。笑顔の絶えないステージとなりました。
●プロフィール●
ダディさん|ボンオヤージ代表、静岡市のとある企業に勤める50代のサラリーマン。個人としても公募のダンスパフォーマンス作品に出演するほか、障がいの有無などを超えて集結した人々が「多様性と調和」のメッセージを街中でのパフォーマンスで表現する活動団体「スロームーブメント静岡実行委員会」のサポートメンバーとしての活動も行っている。
ボンオヤージの活動は、Facebookページよりご覧いただけます。