特集
2019.08.21
花贈りの文化を東三河から全国に「花男子プロジェクト」
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愛知県は、花の産出量において全国1位の都道府県です。中でも、豊橋市や豊川市、田原市などの東三河エリアは、キクやバラなどの一大産地。花の生産量は全国一を誇ります。
そんな、「日本一花をつくる町」である東三河を「日本一花を贈る町」にしようと活動しているチームがあります。その名も、「花男子プロジェクト」。代表の近藤祐司さんにお話を聞きました。
2011年に立ち上げてから、今では、50名以上が参加するようになりました。最近では、「花キッズ」なる子どもたちのユニットもできて、家族のようなチームになってきましたね。
ー「花男子プロジェクト」の主な活動であるステージパフォーマンスについて、教えてください。
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ステージ上で感動の「花贈り」を体験していただくイベントです。ステージの前半は、パフォーマーが3分間で花束をつくりあげ、お客さまを魅了していきます。後半は、会場のお客さまをステージに呼んで、メッセージとともに大切な方へ花束を渡してもらいます。
旦那さんから奥さんへ、彼氏から彼女へ。MCがステージ上で、いろんな人間ドラマを引き出しながら「花贈り」を演出しています。
ー 日ごろ言えない感謝や愛のメッセージも、ステージ上なら頑張って伝えられそうです。どんなドラマが巻き起こりますか?
ある昭和気質の男性は、緊張で汗をかきながら、「いつも支えてくれてありがとう」と言って奥さんに花を贈りました。旦那さんが感謝の言葉を伝えることは、珍しいことだったのでしょう。奥さんはびっくりしながら、感動で泣いてしまいました。
そんなシーンを共有すると、会場全体が感動で包まれます。お子さんからご年配の方まで、「花を贈ってみようかな」という気持ちになります。そのように、贈る側も贈られる側も幸せになる「花贈り」という文化を伝えるのが、僕たちのステージパフォーマンスです。
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ー 近藤さんは、どのようなきっかけで、花男子プロジェクトを始めたのでしょうか?
花の生産量が減っていく業界に危機感を覚えたことがきっかけでした。花男子プロジェクトを始める3年ほど前、花業界には価格破壊が起きていたんです。ガーデニングブームが去るにつれて、国内の花の消費量がどんどん減っていたからです。
本来、花とは、人と人をつないだり、大切な人へ想いを伝えたりするものですよね。それなのに、値段を安くしなければ花が売れません。「僕たち仲卸がお世話になっている花の生産者さん、そして花を卸している小売店さん。 そうした仲間たち、ひいては花業界を果たしてこの先も守っていけるだろうか?」と、悲しいような悔しいような気持ちになりました。
気付けば、東三河が日本一の花の産地だということも、地元の花屋さんにさえ知られていない状況でした。そこで、地域と花業界の活性化につながる活動をしようとの想いで、「花男子プロジェクト」をスタートしたんです。花を贈る男性「花男子」を増やして、男性から女性に花を贈る文化を日本に根付かせるというのが、僕らのミッションです。
ー 花男子プロジェクトを続けて約8年、地域や近藤さんの回りで変化は起きていますか?
全国に誇れる大切な産業を守っていきたいという想いが、地元で強くなっているのを感じます。行政発のプロモーションも増えてきました。
僕自身も、花男子プロジェクトを始めてから、ことあるごとに妻に花を贈るようになりましたね。そんな僕の姿を見ていたからでしょう。先日、長男が、道端の花をあしらった花束を妻に贈ったんです。妻も、心から喜んでいる様子で「ありがとう」と、息子に伝えていました。
「花贈り」は、勇気のいることもしれませんが、相手を笑顔にできる行動です。花を贈る大人の背中を見て、子どもたちも花を贈れるかっこいい男に育ってもらえたら、これ以上嬉しいことはありませんね。
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ー パフォーマンスを通じて「花贈り」の感動を全国に届けてきた「花男子プロジェクト」。これから先の目標を教えてください。
多くの感動を巻き起こす「花贈り」を、もっと手軽にできるような社会をつくっていきたいですね。そう思ったきっかけは、あるシニア向けの介護施設でパフォーマンスを行ったことでした。
「入居者さんを花で元気にしてほしい」というご依頼で伺うと、ひどく難しい表情でみなさんが座っていたんですね。緊張感の中、パフォーマーが1つずつ花束をつくって、1人ひとりに手渡していきました。すると、1人また1人と、笑顔のリレーが起こったんです。
あるおばあさんは、花束をもらっただけで号泣してしまいました。人生で初めて花束をもらったそうで、「ラップをかけて大切にしまっておきたいわ」と、言うんです。それを見たスタッフさんも、感動で涙を流していました。
心を込めた花束を手渡すだけで、人の魂はこんなに揺さぶられるんだと気付きました。ただ、ふと考えたんです。「あの日、僕たちが行かなかったら、あのおばあさんは花贈りの感動を味わうことがなかったのかな」と。
ー 感動の一方で、切ない気持ちにもなるエピソードですね。
そうですね、花贈りをもっと手軽にできるようにしたいと思うきっかけになりました。今年の春には「ハナクル」というアプリケーションをリリースしました。LINEを利用して、大切な人へいつでも花を贈れるサービスです。
誰かが強い想いで始めたことが、人に伝わって文化となり、産業へと発展していくのだと思います。花業界もまだ60年ほどの産業です。これからも大切な人へ「花贈り」をする文化を全国に広めていきながら、業界も産地も盛り上げていきたいと思います。
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▲近藤さんが代表を務める企画会社「HANAイノベーション株式会社」では、フレグランスが香る花びら「BLOOM SHOWER(ブルームシャワー)」を封筒に入れて贈るレターセットも販売している。
●プロフィール●
近藤祐司さん
1977年、愛知県豊橋市生まれ。鉢物・花全般の仲卸企業「有限会社豊橋ボタニカルガーデン」の2代目。2013年7月には、HANAイノベーション株式会社を設立。花を使った面白い企画を各地でプロデュースするなど、花の新しいビジネス展開を探る演出家。
花男子プロジェクトについては、こちらをご覧ください。
イベント開催状況は、花男子プロジェクトFacebookページにてご確認いただけます。
そんな、「日本一花をつくる町」である東三河を「日本一花を贈る町」にしようと活動しているチームがあります。その名も、「花男子プロジェクト」。代表の近藤祐司さんにお話を聞きました。
男性から女性へ花を贈る文化を広める「花男子プロジェクト」
ー「花男子プロジェクト」とは、印象的なネーミングですね。どのようなプロジェクトなのでしょうか?
2011年に立ち上げてから、今では、50名以上が参加するようになりました。最近では、「花キッズ」なる子どもたちのユニットもできて、家族のようなチームになってきましたね。
ー「花男子プロジェクト」の主な活動であるステージパフォーマンスについて、教えてください。
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ステージ上で感動の「花贈り」を体験していただくイベントです。ステージの前半は、パフォーマーが3分間で花束をつくりあげ、お客さまを魅了していきます。後半は、会場のお客さまをステージに呼んで、メッセージとともに大切な方へ花束を渡してもらいます。
旦那さんから奥さんへ、彼氏から彼女へ。MCがステージ上で、いろんな人間ドラマを引き出しながら「花贈り」を演出しています。
ー 日ごろ言えない感謝や愛のメッセージも、ステージ上なら頑張って伝えられそうです。どんなドラマが巻き起こりますか?
ある昭和気質の男性は、緊張で汗をかきながら、「いつも支えてくれてありがとう」と言って奥さんに花を贈りました。旦那さんが感謝の言葉を伝えることは、珍しいことだったのでしょう。奥さんはびっくりしながら、感動で泣いてしまいました。
そんなシーンを共有すると、会場全体が感動で包まれます。お子さんからご年配の方まで、「花を贈ってみようかな」という気持ちになります。そのように、贈る側も贈られる側も幸せになる「花贈り」という文化を伝えるのが、僕たちのステージパフォーマンスです。
花業界と地域を活性化したい、2代目仲卸の想い
ー 近藤さんは、どのようなきっかけで、花男子プロジェクトを始めたのでしょうか?
花の生産量が減っていく業界に危機感を覚えたことがきっかけでした。花男子プロジェクトを始める3年ほど前、花業界には価格破壊が起きていたんです。ガーデニングブームが去るにつれて、国内の花の消費量がどんどん減っていたからです。
本来、花とは、人と人をつないだり、大切な人へ想いを伝えたりするものですよね。それなのに、値段を安くしなければ花が売れません。「僕たち仲卸がお世話になっている花の生産者さん、そして花を卸している小売店さん。 そうした仲間たち、ひいては花業界を果たしてこの先も守っていけるだろうか?」と、悲しいような悔しいような気持ちになりました。
気付けば、東三河が日本一の花の産地だということも、地元の花屋さんにさえ知られていない状況でした。そこで、地域と花業界の活性化につながる活動をしようとの想いで、「花男子プロジェクト」をスタートしたんです。花を贈る男性「花男子」を増やして、男性から女性に花を贈る文化を日本に根付かせるというのが、僕らのミッションです。
ー 花男子プロジェクトを続けて約8年、地域や近藤さんの回りで変化は起きていますか?
全国に誇れる大切な産業を守っていきたいという想いが、地元で強くなっているのを感じます。行政発のプロモーションも増えてきました。
僕自身も、花男子プロジェクトを始めてから、ことあるごとに妻に花を贈るようになりましたね。そんな僕の姿を見ていたからでしょう。先日、長男が、道端の花をあしらった花束を妻に贈ったんです。妻も、心から喜んでいる様子で「ありがとう」と、息子に伝えていました。
「花贈り」は、勇気のいることもしれませんが、相手を笑顔にできる行動です。花を贈る大人の背中を見て、子どもたちも花を贈れるかっこいい男に育ってもらえたら、これ以上嬉しいことはありませんね。
大切な人へ想いを伝える「花贈り」をもっと手軽に
ー パフォーマンスを通じて「花贈り」の感動を全国に届けてきた「花男子プロジェクト」。これから先の目標を教えてください。
多くの感動を巻き起こす「花贈り」を、もっと手軽にできるような社会をつくっていきたいですね。そう思ったきっかけは、あるシニア向けの介護施設でパフォーマンスを行ったことでした。
「入居者さんを花で元気にしてほしい」というご依頼で伺うと、ひどく難しい表情でみなさんが座っていたんですね。緊張感の中、パフォーマーが1つずつ花束をつくって、1人ひとりに手渡していきました。すると、1人また1人と、笑顔のリレーが起こったんです。
あるおばあさんは、花束をもらっただけで号泣してしまいました。人生で初めて花束をもらったそうで、「ラップをかけて大切にしまっておきたいわ」と、言うんです。それを見たスタッフさんも、感動で涙を流していました。
心を込めた花束を手渡すだけで、人の魂はこんなに揺さぶられるんだと気付きました。ただ、ふと考えたんです。「あの日、僕たちが行かなかったら、あのおばあさんは花贈りの感動を味わうことがなかったのかな」と。
ー 感動の一方で、切ない気持ちにもなるエピソードですね。
そうですね、花贈りをもっと手軽にできるようにしたいと思うきっかけになりました。今年の春には「ハナクル」というアプリケーションをリリースしました。LINEを利用して、大切な人へいつでも花を贈れるサービスです。
誰かが強い想いで始めたことが、人に伝わって文化となり、産業へと発展していくのだと思います。花業界もまだ60年ほどの産業です。これからも大切な人へ「花贈り」をする文化を全国に広めていきながら、業界も産地も盛り上げていきたいと思います。
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▲近藤さんが代表を務める企画会社「HANAイノベーション株式会社」では、フレグランスが香る花びら「BLOOM SHOWER(ブルームシャワー)」を封筒に入れて贈るレターセットも販売している。
●プロフィール●
近藤祐司さん
1977年、愛知県豊橋市生まれ。鉢物・花全般の仲卸企業「有限会社豊橋ボタニカルガーデン」の2代目。2013年7月には、HANAイノベーション株式会社を設立。花を使った面白い企画を各地でプロデュースするなど、花の新しいビジネス展開を探る演出家。
花男子プロジェクトについては、こちらをご覧ください。
イベント開催状況は、花男子プロジェクトFacebookページにてご確認いただけます。